絶望的な激痛が奇跡的に治った話(5)

(4)の続きです。

『か●●公いち治療院』の気功教室に初参加した時のお話です。
治療院はマンションの一室、参加した生徒さんはたしか5~6人くらいだったと思います。すべて女性で、年代は30代~60代くらいでした。

最初、先生は熱く語りはじめました。何を目指して気功をやるのか、どうして病気になるのか、深呼吸の大切さなど…そっち系の本によく書かれてることで知識としては知っていましたが、私はかなり先生の話に引き込まれて感銘を受けました。
体験談や具体的な例を交えて話し、その話が「そうそう」「あるある」と思ってしまうような普遍的なものだったので、自分の過去の体験ともイメージが重なり、深く心に響きました。上手いです。
なるほど、この先生にファン(信者)がたくさんいるのは、話すのが上手だからかもしれないな。。。と納得。帰り道で他の生徒さんに聞いたら、いつもはそんなに語ったりしないそうで、おそらく初めて来た人がいたからだろうということでした。

さて、先生が一通り語った後、ついに気功教室実践編が始まりました。内容は、深い呼吸の練習や、手を動かしながらイメージで気を体の中に通していく練習など、どの気功の本にも載っているような基本の気功でした。基本は大切なんでしょうが、これはちょっと期待外れでした。盗みに来る人もいるって言ってたけど、どこを盗むんだろう??特にオリジナリティは感じませんでした。

最後に先生が一人一人に気を流していきます。これがこの教室の一番の売りのようで、どうやら常連の生徒さんたちはこれを目当てに来ているようです。急に皆さんの顔が輝きだしました。
一人ずつ先生の前に出ていって気を受けます。他の人は座って見ています。古株らしき生徒さんは、先生の気を受けて思いっきり飛ばされたり、動けなくなったり、先生の手の動きに反応して笑いが止まらなくなったり、めちゃくちゃ楽しそうです。しかしそれに比べて、比較的新しい生徒さんは動きが鈍いです。そこまで先生の気に反応していないようです。
「もっとリラックスして」「力を抜いて」など先生や古株さんがアドバイスしています。
あれ?気を受ける方も結構難しいコツがあるの?
それを習得しなきゃ気は感じられないの?
だんだん不安になってきました。

ついに私の番が来て、少し緊張しながら先生の前に立ちました。
先生が手をかざして気を流します。
しかし、まっっっったく何も感じません。
次に先生は私の後ろに立ち、「ブシュー!!」という効果音のような声を出し、気を出しているような様子でしたが、これも全く感じられません。
「あなた、緊張してるから固くなってるのよ。そうなると気は流れないからリラックスして!抵抗しないで!」と先生。
そこで、私はリラックスしようと、深く息を吐き、手足をブラブラしてみました。
「いやいや、そんなことしてもリラックスできないのよ。そうやって頑張ってリラックスしようすると余計力が入るのよ」と先生。
ええ?!今までの経験から呼吸を深くして身体をゆするとリラックスしやすいんだけどな。。

気が感じられないのはこっちが悪いかのように怒られているうちに、疑念と反発心がわいてきました。

この人何様?
いちいちうるせえわ。
だいたい私の方があなたよりスポーツ&武道経験は豊富だし。。力の抜き方もわかってるんですけど。。
それでも気が感じられないのはあんたの実力不足でしょ?
こっちは全くニュートラルな気持ちで、気が感じられるか試したかったのに。。。
信仰も抵抗もしていなかったのに。。

そこでピンときました。

ああ、そうか、気が感じられないのは先生に対する信仰心が足りないからかもしれない!
合気道で弟子じゃないと飛ばすことができないっていうのと同じ原理か・・・。

前半の先生の熱い語りで深く感銘は受けたものの、疑い深い性格上、そこまで短時間で信心はできませんでした。
気を感じるためにはもっと洗脳されなきゃいけなかったのかもしれない。。。
という仮説を立てたところで、私の番は終了。
結局、な~んも感じませんでした。
そして、まだまだ私の修練が足りないかのような空気。初心者だから仕方がないよね。。という雰囲気。

初めての気功教室はモヤモヤした気持ちで終了し、他の生徒さんたちと一緒に駅まで帰りました。
その中で比較的新しく参加している生徒さんに話しかけて、
「本当に気で飛ばされてるんですか?それとも少しは先生に忖度してるとか?」と聞いてみました。
するとその生徒さんは、
「う~ん、忖度しているところはあるかもね。そうやって自分に言い聞かせているうちにだんだん動いてるのか動かされているのかわからなくなって。。」と答えてくれました。

気功ってそういうもの?
昔、テレビでダウンタウンが気功師に飛ばされるのを見ましたが、かなり抵抗しているにも関わらず、その気功師の思うがままに操られていました。だから、こっちがどんなに抵抗しても動かされてしまうのが気功の達人の力だと思っていました。
そうか、ダウンタウンのあの必死の抵抗は演技だったのかも。。。がっかり。。
まあテレビ業界ってそういうところですね。
その点、ドランクドラゴン鈴木拓の存在は尊いです。

がっかりはしましたが、高い入会金と月謝を払ってしまったので、とりあえずその月は通ってみようと思い、次の週も参加しました。
2回目に参加した日は、先週のような前半の熱い語りはありませんでした。メニューは呼吸の練習や気を流す練習など、先週とまったく同じでした。
そうか、やることは毎回同じなんだ。。正直退屈です。これだけじゃみんな飽きてしまいそうだな。。。
やはり後半の、気で飛ばされるのが面白くて常連さんは通っているんだな。。。と考察。

先生がまた一人一人に気を流します。
私の番が来ました。
今回も気が感じられなくて動かなかったら、また怒られそうです。めんどくさいので、とりあえず飛ばされる演技をしてみようと思いつきました。
「うわっ」とか言いながら、最初はよろけるように、だんだんと激しく、気に動かされる演技をしてみました。
もちろん、気は全然感じていません。
先生はほっとしたような嬉しそうな表情になり、「そうそう、力が抜けてきた」などとほめてくれました。
演技をしているのはバレなかったようです。
先生も上機嫌になって、私も怒られなくてよかったです。

ただ、その時点で私の心は本格的な失望感に襲われました。
気功には期待していたのに、がっかりです。失望です。
本当の気功の達人はどこかににいて、私が出会えていないだけかもしれませんが。
よく考えると、常連の生徒さんにとってはこの先生も達人なので、私がちゃんと洗脳されなったせいかもしれません。
まあ相性ってことでしょうね。

今思えば、ホームページに「2ヶ月は予約でいっぱいです」とあったのも、この先生の力はすごいと信じさせる営業テクニックの一つだったのでしょう。それに絶賛レビュー動画や奇跡的に治った体験談、有名人との対談などがてんこ盛りなのも怪しすぎる…まんまと騙された当時の自分に説教したい。小一時間問い詰めたい。。普通に考えればそんなに簡単には引っかからないはずですが、藁にもすがる気持ちとは本当に恐ろしいものです。
わざわざ交通費と貴重な時間を使って、もうここには通いたくないなと思いました。3万円は高い授業料だったけど、今回を最後にしようと心に決めたのでした。

帰り道、前回も話しかけた新参の生徒さん(以下A子さんとします)と話しながら歩き、
「私は今日で最後にしようと思います。やっぱり通うの大変なので・・」と伝えました。
その後色々世間話をして、その流れで今まで試してみた治療法の話になり、
「十字式とかも行ったんだけど。。十字式って知ってます?キリスト教系の…」
「キリスト教?」
A子さんの目がキラッと光りました。
A子さんは華奢ですごく優しそうな雰囲気の女性なのですが、急に力強い表情になりました。そして、キラキラした目で語ってきました。
「私、ここ以外にもう一つやってることがあって。。もしかしたらそれが助けになるかもしれないよ。ちょっとランチでもしながら話しましょうか。。」

次回は、生まれて初めて新興宗教の施設に連れていかれたお話です。

(6)へ続く