絶望的な激痛が奇跡的に治った話(12)

(11)の続きです。

これはちょっとした番外編になります。
ちょうど『Aセラピーセンター』に行き始めたくらいの時期です。
私は若い頃の不思議な経験が忘れられず、まだ気功治療にもこだわっていました。
どこかに本物の先生がいるはずだ!そしてもう一度あの面白い体験をしてみたい!と、面白そうな気功治療を探していたら、近所に『S気功センター』なるものを発見しました。(※現在は他県にお引越しされているようです)
この先生はCD付きの本も何冊か出版されていて、そのレビューは賛否両論。今思えば、絶賛レビューはサクラか関係者かなという感じもしますが、当時の藁にもすがりたい私は絶賛レビューの方を信じて予約をしました。
メールで予約をしたのですが、その返信メールには施術を受ける際の細かい注文がたくさん書かれていました。まさに“注文の多い治療院”です。
例えば、
「必ず5分前に到着するようにしてください。それより早く来られても遅く来られても入れません」といった内容。
厳しい。。電車の時間の関係でそれより前に着いちゃうこともあるだろうし、私はいつも余裕を持って約束の10分位前に着くようにしてるんですが。。。
治療院はご自宅と兼用なので、あまり早く来られても迷惑なのかもしれませんね。
それから、
「靴下は履いているもの以外にもう一足分用意してください。玄関に入ったら、履いている靴下の上から持参した靴下を重ね履きしてからあがってください。衛生上の理由です」という内容もありました。
つまり、もう一足の靴下はスリッパの代わりってこと?スリッパを用意して消毒するのが面倒ってこと?

こういった細かい注文に???となりながらも、私は靴下一足分を持参し、駅からの道で時間を調整し、治療院となっている先生ご自宅の一軒家の前でぼーっと立って数分待ち、予約の時間の5分前きっかりにインターホンを鳴らしました。
ごく普通の一軒家でした。先生の奥様が玄関のドアを開けてくれ、言われるがまま、用意したもう一足の靴下を今の靴下の上に重ね履きすると、ようやく家に上げてくれました。慣れない靴下の二重履きで足に違和感を感じながら廊下を歩き、治療室となっている広めの部屋に案内されると、そこにはついたてが立っており、手前には椅子があって待合室のようになっています。ついたての向こう側には先客がいるらしく、先生と話す声が聞こえます。まだ治療中のようでした。
奥様によると、常連さんの予約が急に入ってしまったので少し待ってほしいとのこと。私は待っても5分~15分くらいかな、と思っていたのですが、結局50分も待たされました。

いやいやいやいや、こっちには5分前きっかりに来いと強制しておきながら、50分も待たせるって社会人として、というか、人としてどうなの?びっくりしました。
もし「必ず5分前に到着しろ」という強制的な指示がなければ、ここまでムカつかなかったはずです。人気があって忙しいのね、と思うだけでした。しかし、この“自分に甘く、他人に厳しい”ダブルスタンダードは本当にムカつきます。
私は何度も帰ろうと思いましたが、当日キャンセルは結局100%料金とられるかもしれないし、こういう常識のない人だったら不思議な治癒力があるかもしれない、もしかしたら劇的に効くかもしれない、などと考えて我慢して待ちました。
スピリチュアル業界は、こういう社会人としての常識が欠如している人が時々いてびっくりしてしまうことが多いです。今まで誰にも注意されたり指摘されなかったのでしょうか?それとも信者が増えていくにつれ、自分のわがままは許されて当然と思ってしまうのでしょうか。

ついたての向こう側からは、その急に予約を入れた常連さんと先生との会話が聞こえてきます。
常連さんは声の感じからして、おそらく中高年位の男性、正直、とても気持ち悪い声でした。完全に先生に依存している、洗脳が完了した信者のようでした。
「○○が痛いんです。あと、最近、●●も痛いんです。あ、あと、姉が△△も痛いと言っていましたので姉も…」
などと必死で不調な体の部分を訴えていました。すべてをこの先生の気功で治そうとしています。
私は聞いていて、「いや、毎日軽く運動すればそれくらい全部治るだろうよ」という突っ込みを入れたいくらいの症状でした。
先生は、「あなたはもう足裏重心の基本ができているので上級コースに進めますよ」などと言っています。
さらに、「では治療をあと△回と上級コースで全部で〇〇〇〇円になります。帰る時に受付で支払ってください」などとという会話になっていました。(※ここでいう受付とは先生の奥様のことだと後でわかりました)
この料金はうろ覚えですが、確か十数万円くらいだったと思います。この常連さんはすでに払う気満々でした。そんな額の現金持ち合わせていたのか、払うつもりで持ってきたのかは不明です。すごいな、、そんな軽~い体の不調にそこまでの額を一括でホイホイ払っちゃうなんて。。。しかも上級コースってなんだよ?怪しすぎるなぁ。。。

そんな会話を聞きながら、私の不快な気分はどんどん大きくなっていきました。長時間待たされてムカつくし、信者はキモいし…

さて、やっとその常連信者さんの治療が終わり、ついたてのこちら側にその方がやってきました。その方の声をずっと聞いていて嫌悪感でいっぱいになっていた私は、(ぜっっったいに目を合わせたくない!)と思ったのでずっとスマホを見ていました。その方はそのまま部屋から出ていきました。なので、常連信者さんがどんな容姿だったのかはわかりません。
その後すぐに「どうぞ」と先生に言われて、ついたての向こう側に行きました。
先生は真っ黒な髪がとても不自然な印象の70~80代くらいの高齢男性でした。

中央付近には施術用ベッドが置かれており、その上のシーツはクシャっとなっていました。
うわっ、絶対これ、シーツ替えてないよね…さっきのキモい信者が寝ていたそのまんまっぽい。。。
いやいやいやいや、こちらには靴下を二足用意させて、自分の家の廊下を汚させないようにしてるのに?
そこまで神経質な反面、患者に対してはシーツも替えずのそのままって。。。しかもあのキモい患者の後だよ???
本当にびっくり!!
この時点でもう私は不信感でいっぱいになっていました。

ベッドの向こうにはちょうどお医者さんが使うような机と椅子のセットがあり、その患者が座るような椅子もその前にありました。先生は椅子に座り机に片手をつきながら、「まず、そこに座ってください」と患者用の椅子に私を座らせました。
一通り症状を説明すると、先生が
「スピリチュアルなことに興味はあるんですか?」と聞いてきました。
「はい、興味はありますがあまり信じてはいません」と私が正直に話すと、先生は急に不機嫌そうな表情になり、
「じゃあ、効かないかもしれないな」と言いました。
え?あれ?正直に言っちゃいけなかった?
「はい、スピリチュアル大好きなんです!信じてます!」とでも言えばよかったのでしょうか?
そういうタイプじゃないと洗脳できないことがもう今までの経験からわかっているのでしょうか?

その後、30分位、先生の一人語りを聞きました。が、内容はほとんど覚えていません。とにかくエラソーな態度だったなという記憶だけはあえいます。
エラソーというのは脅すような威圧するような態度ということではなく、あまり頭がよろしくないのに賢い人ぶって話すなぁという感想でした。なんだか身の丈に合っていない演技をしているようなヘンテコな印象でした。この先生は学歴コンプレックスでもあるのかな?と思いました。
帰ってからホームページで先生のプロフィールを確認してみると、最終学歴が“〇〇短期大学卒業”となっていました。なるほど、先生は昔の時代の人だから、当時は今よりもっと学歴に対する偏見は強かったのでしょう。「男のくせに短大卒かよ」などと言われていたのかも。。と勝手な妄想が膨らみました。

話を戻します。
先生のつまらない話がやっと終わって治療が始まりました。結局シーツは替えてくれず、さっきのキモい信者が寝た後のベッドに横になり治療を受けました。ここも何をやったかほとんど覚えていません。先生は手を触れずにひたすら手かざししていたような、そんなおぼろげな記憶があります。
案の定、痛みは1ミリも改善しませんでした。

治療が終わると、「では、あちらの部屋で料金を支払ってください」と、隣のせまい部屋に誘導されました。
薄暗い小さな部屋に入ると、そこにはテーブルがあり、向かいには先生の奥様が座っていました。料金の16500円を支払うと、奥様は怖いくらいの作り笑いと明るい声で「これは確定申告の時に経費として落ちますからね!ご利用くださいね」と言いながら手書きの領収証を渡してくれました。
私が納得のいかない表情をしていたのを気遣ってくれたのでしょうか。でも、なんだかとても怖かったです。勝手ながら、この奥様にとてもキツくて神経質な印象を覚えました。“5分前絶対到着ルール”とか“靴下持参ルール”はこの奥様が考えたのかもしれないな、と思いました。
この家全体の雰囲気がどんよりとしていたのも印象的でした。私の心がどんよりしていたからそう見えてしまったのかもしれませんが。。。きっと信者にとっては素敵な雰囲気のお家なんでしょうね。
以上、とても嫌な思い出でした。

この体験を機に、もう気功はいいや、と思いました。
気功の治療が効くのは、その先生に心酔して洗脳された状態に限るのでしょう。
疑い深い自分にとって、それはなかなか高いハードルです。
これなら、やはり自分で自分を洗脳したほうが手っ取り早いです。

(13)へ続く