絶望的な激痛が奇跡的に治った話(7)

(6)の続きです。

私とA子さんは電車を乗り継いでやっとJR立川駅に着き、そこからバスでS如苑の本部へ向かいました。
バスの中でA子さんは、料金システムを説明してくれました。
「入会してからかかるお金は月200円、だから年会費2400円だけで、それ以外は一切お金はかからないの。で、入会しちゃえば1回1000円で“接心”が受けられるから、試しに入会して“接心”だけ受けてみれば?その痛みの原因がわかるかもしれないし。年会費は年度単位で一括払いだから、今入れば3月分の200円だけ払えば入会できるよ?」

なるほど…そのなんちゃって霊能者が不吉な予言をする“接心”とやらを体験してみたい好奇心もありましたが、一度入信しちゃうと抜けるの大変そうだしな…それに1ヶ月でも在籍しちゃうと“元信者”ってことになるのもなんか嫌だな…

そんな話をしているうちにバスは到着。そのA子さんの本部が終点でした。
想像以上に広大な駐車場が広がっていてビビりました。まあ新興宗教の本部だから広いのは当たり前ですが、こんなバカでかい土地を所有して、警備員の方もいて、たとえ信者がたくさんいたとしても、月会費200円じゃ維持できないよね。。。とモヤモヤしながら本部の建物に入ってさらにびっくり!
ひ、広い。。。大型商業施設によくある吹き抜け&エスカレーターで全体が見渡せるような構造になっていて、巨大な規模です。そして事務所らしきスペースで働くたくさんの人たち…人件費もなかなかになりそうだけど、もしかしてこの人達は信者だからタダ働き?などとさらにモヤモヤグルグル考えながら、手続きを済ませ、エスカレーターに乗って上階に行き、そこから歩いて本堂(?)へ向かいました。
途中ですれ違う信者の方々が、「おかえりなさい!」と笑顔で感じよく挨拶してくれます。ここに来る=“家”に帰ってきた、という設定のようです。皆さんとても優しい感じで、そのおかげで緊張が解けて安心できました。痛みで弱気になっているせいもあり、みんないい人そうだなぁ…会費も安いし、ここはいい団体なのかもしれない…とも思いました。

その日のイベント会場となる本堂(?)に着きましたが、開始までまだ時間があったので、A子さんが、「いろんな部屋があるからちょっと見てみる?案内するね」といくつか部屋を見せてくれました。部屋というよりも、それぞれが中規模のライブ会場くらいの広くて高~い天井のスペースで、見上げるような巨大な曼荼羅が張り付けてあったり、他の部屋には、前方のステージ上にこれまた見上げるような巨大な像(はっきりとは覚えていないが観音像のようなありがたい感じの像)があって下から綺麗な色と光でライトアップされていたりしました。
メインイベントの会場は一番巨大なスペースでたくさんの人が集まっていましたが、A子さんが案内してくれた他の部屋はどこもほとんど人がいませんでした。無駄遣い感が半端なかったです。きっと心が純粋な人だったら、ライトアップされた銅像や巨大曼荼羅に畏怖の念やありがたい感じを受けるのかもしれません。が、私の頭の中は、この建物の維持費はどこから捻出されるのだろう?という疑問だけが占めていました。

そこでA子さんに、「これって月200円の会費じゃ維持できないよね?」と聞いてみたところ、
「うん、何人かすごいお金持ちがいて、その人たちが高額な寄付をしてくれんるんだよ。普通の会員は会費だけでいいの」と教えてくれました。
ふ~ん、そんなものか。それで成り立つんだぁ。

さて、時間が来て、やっとその日のメインイベントが始まりました。年配の女性が出てきて何かしゃべっています。質素な身なりでフレンドリーなしゃべり方、「楽にしてよぉ!」などとおっしゃっていましたが、聞いている方々の態度がやや固く、緊張感や畏れ多い感じが伝わってきました。きっとこの女性は、この団体の偉い人なのだろうということはすぐにわかりました。後で検索すると、やっぱり教祖様でした。話の内容は全く覚えていません。この時点で、私の腕や背中の痛みが強くなり始めました。
教祖様のありがたいお話が終わった後、会場に集まった全員でお経の合唱が始まりました。隣に座っているA子さんをチラッと見ると、目を輝かせて一生懸命お経を唱えています。よく知っている般若心経だったり、時々サンスクリット語になったり、皆さん暗記して一斉に唱えているのでおそらく順番が決まっているのでしょう。そんな大合唱を聞きながら、私の痛みはますます強くなり吐き気もしてきて、とにかく横になりたい…でも、寝そべっている人はいないし、A子さんを心配させちゃうし…でも、背中がきつい、気持ち悪い、もう限界です!
私は移動して壁にもたれかかりました。少し楽になりました。A子さんが気づいてこちらに来て、「大丈夫?」と声をかけてくれました。「大丈夫、痛みがひどくなって寄りかかりたかっただけ」と言うと、A子さんは隣に座ってまた熱心にお経を唱え始めました。1秒たりとも無駄にできない!お経を読めば読むほど幸せになれるはず!といった感じの気迫が伝わってきました。私は本当に本当に早く帰りたいなぁと思っていました。
その後、例の霊能者のお告げを聞く“接心”というのが始まって、何人かの“霊能者”と信者が中央に集まっていましたが、ここら辺は痛みと吐き気でフラフラしていたのでうろ覚えです。こんなにたくさん“霊能者”がいるんだぁと思ったことだけは覚えています。

その後、またバスと電車を乗り継いでなんとか家に帰りました。おそらくA子さんとは立川の駅で別れたと思います。ここもうろ覚え。
その日の夜A子さんからLINEが来て、「今後のスケジュールは〇月〇日〇時~〇月〇日〇時~〇月〇日〇時~」とS如苑をスケジュールを細かく伝えてきてくれました。完全に私が参加する前提です。
もちろん丁重にお断りしました。

それ以降、しばらくはA子さんからのLINEはなかったのですが、ちょうどその1年後くらいに、「その後、体調はいかがですか?」と久しぶりにLINEが来ました。
私はもうすっかり痛みは治っていたので、その旨を伝えると、「よかったですね」と返信が来て、それ以来全く連絡はありません。
きっとまだ痛みに苦しんでいたら、そこを狙って再び勧誘するつもりだったんでしょう。
A子さんはちゃんとタイミングも頻度もわきまえていて、しつこく勧誘するタイプじゃなくてよかったです。
そういうところは常識的なのに、なぜあそこまで新興宗教に嵌ってしまっているのか不思議です。

途中で信じるのをやめたら今までの修行もお布施も無駄になり、悪いことが起こるかもしれない、という恐怖が論理的思考を麻痺させてしまうのでしょうか?
う~ん、でも破滅するほど散財しているわけでもなく、強引な勧誘活動をしているわけでもなく、本人が夢中で楽しんでいるんだから、私が外野からとやかく言うことでもないですね。推し活のようなものですかね。
現に、私は何の被害も受けていないし、逆に親身になって私のために時間を使ってくれたんだし、善意しか感じられなかったです。。が、
でもなんだろう、このモヤモヤ感は。。。
世の中にはいろんな人がいるんだな、という結論に落ち着くしかないです。

新興宗教のお話はここまでです。

続いては生まれて初めて“カイロプラクティック”の治療に行ったお話です、結局カイロには3軒行きましたが、ちゃんとした“まとも”なカイロと、“マルチまがい商法的”なカイロがあることを学びました。本当に治療ビジネスの世界って恐ろしいです。
結論から書くと私の激痛にピリオドを打ってくれたのは、3軒目に行った“まとも”なカイロです。
次回は1軒目に行った“マルチまがい商法的”なカイロについて書きます。

(8)へ続く