絶望的な激痛が奇跡的に治った話(3)

(2)の続きです。

曲がってしまった首の骨、ずれてしまった椎間板を治すため、不思議な治療法「十字式健康法」の吉祥寺会場(現在は閉鎖)に向かいました。
混んでいるときは数時間は待つと聞いていたのですが、私が最初に行ったときは広い待合室には誰もおらず、そのまま待たずに診てもらえました。治療する先生は宗癒師(しゅうゆし)と呼ばれていて、いろいろな方が交代で来ていて、人気のある先生とそうでもない先生がいるらしい、ということが後からわかりました。私が最初に診てもらった先生はまだ新しい先生で、あまりファンもついていなかったのでしょう。
治療の様子は前もってネット上で体験談を読んでいましたが、まさにそのまま、読んだとおりでした。先生は背骨に白いパウダーをつけ、「ウシ! フン! シュー!」などの気合の入った掛け声をあげます。全部で3分くらいで終了。いや、これでほんとに治るんならいいけどさ。。。痛みは全く変わりません。
でも帰り道でよくなってきたとか、数回通って治ったとか、という話も聞いているので、しばらく様子を見ることにしました。家に帰ってからも、その翌日も、数日たっても、痛みは変わりません。

先生が新米だからダメだったのかな。。。
そこでとりあえず、十字会のブログに載っている予定表を見て、すべての先生に当たるように時間と曜日を変えて通ってみることにしました。そして10回通ってみて痛みに変化がなければ、ここはやめて他のところを探すことにしようと決めました。
週1位で通っていると、混んでいる時間帯、人気のある先生、何故かいつも絶対いる常連の患者さんなどが観察できて興味深かったです。
吉祥寺会場の待合室に併設された喫茶店はすごくよかったです。
待ち時間にケーキやハニートースト、本部の北海道から取り寄せたお菓子などを食べましたが、全部当たり!美味しい!
ただ、コーヒーはその時に調理を担当しているスタッフさんによって全然味が違いました。一人めちゃくちゃ上手にコーヒーを淹れる人がいて、その人がいたら絶対に喫茶店に入ってコーヒーを注文しました。同じコーヒー豆でも淹れ方によってこんなにも味が変わるもんだなと思いました。

十字式に行ってよかったのはその喫茶店だけです。
そう、10回通っても、先生を変えても、痛みは全く緩和されませんでした。
先生はみんな信仰心があって人を助けたいという純粋な気持ちで仕事をしているのは伝わってきましたが、とにかく私には効きませんでした。やはりキリスト教徒じゃないとダメだったのでしょうか。。。
人によっては一回で奇跡的に治る人もいるみたいですが。。。
ここからしばらく、治る仕組みってどういうことなんだろう?というテーマに向き合うことになります。

十字式で気になったのは、時間や曜日を変えて行ったのに、行くたびにいつも待合室に座っている人です。この人は毎日、そして一日何回も来ているの??と不思議に思いました。毎日来てるってことは全然治らないってこと?
また、常連の年配の御婦人方のコミュニティらしきものが出来上がっていて、今度はあの先生に行ってみようとか、あの先生は中々よかったとか、楽しそうにおしゃべりしています。おそらく、ちょっとした肩こりや腰痛でここに来て、少し軽くなる⇒常連になる⇒友達を誘うという流れで、十字式が趣味のような感じになっているのかもしれません。もしかしたらおしゃべりすることでストレスが発散されて、ちょっとした肩こりが治っているのかもしれません。病院の待合室やスポーツジムでもよくある光景です。コロナ渦であらためて気づきましたが、他人と軽くおしゃべりするだけで、かなりストレスが緩和されますよね。。これもちょうどよい距離感は必要ですが。。

わたしが絶望感を覚えたのは、ある一人の先生に今の症状を伝えた時、
「まったく同じ症状の人が通ってたよ」と聞き、
「その人は治ったんですか?」と尋ねると、
「うん、まあ一年くらいかかったけどね。でもその人、今度は腰が痛いって通ってるよ」

一年?!
それって、もはやこの治療の効果かどうかわからないじゃん。
しかも、あちこち痛くなって結局ここに通い続けるのはどうなんだろう?
私はとっとと治したいんですが。。。
これは、カリスマ的な整体師さんにハマって通い続けている人とかも同じかも。
民間療法ってこういう依存関係を成立させることでビジネスモデルが成り立っているんですね。
まあ、値段もバカ高くはないし、先生もスタッフさんもいい人そうだし、趣味として通うのも本人が楽しいならいいのかもしれません。習い事のようなものか。。。
私は絶対嫌だけど。。

民間療法の世界を初めて見て、新鮮な衝撃を受けました。
これはある種の人たちにとっては一つの趣味なんだ。。。

もちろん、腰をさすりながら黙って座っている中年男性や、介護の人に手を引かれてよろけそうになりながら待合室に入ってくる方も見かけました。この人たちは急性の症状で、趣味などではなく一回の奇跡を求めてやってきているのだとわかります。私もそっち側です。

私には奇跡は起きませんでしたが、ネット上の体験談を見ると、奇跡的に治る人もいるんですよね。
この違いは何なんでしょうか?

(4)へ続く